どのような樹種及び塗料などを使用するかを決める為に

 

1. 期待する性能の優先順位を明確化

1.      木材の色調を最優先しますか?

2.      木材の感触、感覚を最優先しますか?

3.      安全性を最優先しますか?

4.      耐久性を最優先しますか?

5.      経済性を最優先しますか?

 

2.使用環境評価の条件を推定する

(1) 施工地のCIclimate index)地域別劣化指数は?

(2) ウエザリングマップによる施工地の該当区分のどの位置にあるか?

(3) 温度積による腐朽推定マップによる施工地の該当区分のどの位置にあるか?

(4) 施工場所の方位、角度、地上高などは?

日本での地域別相対劣化危険度表

相対劣化危険度

地域(5=極大、4=大、3=中、2=小、1=極小)

沖縄地方、九州地方中南部

九州地方北部、中国東南部、四国地方、近畿中南部、中部東海東南部、関東東南部

中国地方北西部、近畿北部、北陸南部、関東北部

中部山岳地方、信越南部、東北地方、北海道南部

北海道(南部を除く)


(5)
ハザードクラス(劣化環境区分)の参照(EUの基準例)

1 非接地、屋内、材は常に乾燥

2 非接地、屋内、材は時々水分に曝される

3 非接地、屋内、しばしば材水分に曝される

4 接地又は淡水に接する、屋外、常時水分に接する

5       絶えず海水に曝される

 

 

 

 

 

*劣化危険度と使用環境表*

劣化危険度

使用環境

劣化原因

腐朽可能性

蟻害可能性

非接地−非暴露

(屋内、時々湿潤)

非接地−暴露

(屋

接地−暴露

甚大

甚大

接地−暴露

甚大

甚大

 



 

3.     木材の樹種などの決定
考慮に入れる点
*木材の含水率が低い方が良い − 干割れ等からの腐り防止
*辺材より心材の方が強い − 心材内の抽出成分に抗菌性がある
*板目より柾目の方がよい − 表面の割れ、そりが少ない
*未成熟材(8-10年以内)は弱い −割れ、そり、ねじれの原因
*保管していた状態(雨などかかっていないか)
*晩材と早材 −晩材率の多いほうが強い

*節などの有無 − 死に節の穴抜けや生き節の塗料抜け、ヤニ変色など
  *製材前、後の防黴剤浸漬や、パラフィン系撥水剤などの有無

 

[心材部分を使用した場合の各樹種の強さ]

耐腐朽性能が極大のもの(心材部)

レッドウッド、イピール等

 

耐腐朽性能が大のもの(心材部)

ベイスギ、ベイヒ、ヒノキ、ボンゴシ、イペ、ユーカリ、パラウ、ヒバ、ケヤキ、クリ等

耐腐朽性能が中のもの(心材部)

カラマツ、杉、ベイマツ、ケンバス、イチイ、シラカシ、ナラ、カヤ、クサマキ、カツラ等

耐腐朽性能が小のもの(心材部)

ベイツガ、モミ、アカマツ等

耐腐朽性能が極小のもの(心材部)

エゾマツ、スプルス、ブナ等

 

木材の使用環境と保存性能区分

木材の使用環境

性能区分

屋内の乾燥した条件で腐朽・蟻害のおそれのない場所で、乾燥害虫に対して防虫性能のみを必要とするもの

K1

低温で腐朽や蟻害のおそれの少ない条件下で高度の耐久性の期待できるもの

K2

通常の腐朽・蟻害のおそれのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの

K3

通常よりはげしい腐朽・蟻害のおそれのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの

K4

極度に腐朽・蟻害のおそれのある環境下で高度の耐久性の期待できるもの

K5

 

4. 用途に合わせた塗料の種類と性能、安全性及び経済性を調査
*防ぎたい劣化因子による分類例
ウエザリング(気象劣化、光劣化、大気汚染他)− 表面用木材保護耐候塗料

 

劣化因子

カビ

腐朽菌

白蟻

昆虫類

 

対応保存剤

木材防黴剤

木材防腐剤

木材防蟻剤

木材防虫剤

各種溶剤など

劣化要素例

表面汚染菌、藻類など

褐色腐朽菌、白色腐朽菌、ナミダタケなど

ヤマトシロアリ、イエシロアリなど

ヒラタキクイムシ、シンバムシ等

 

日本木材保存協会認定使用薬剤

有機ヨウ素系、フェノル系、トリアゾール系、脂肪族金属塩系、ベンズイミダゾール系、チアゾール系、チオシアネート系

有機リン系、カーバメイト系、ピレスロイド系、非エステルピレスロイド系、ネオニコチノイド系、フェニルピラゾール系、塩素化エーテル系、カプリン酸、ヒバ油など

 

安全性と規制関連法律

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)、一部第二種監視化学物質、一部水質汚濁防止法

一部毒物及び劇物取締法、化審法、一部水質汚濁防止法

大気汚染防止法、VOC等シックハウス法

処理材の廃棄処理

特定の廃棄基準に合わせ、運搬、収集、廃棄を行わなければならない



 

*塗料の形態による分類

 

種類

含浸型

半造膜型

造膜型

特徴

塗装が容易、湿気の給排出可、干割れがしやすい、再塗装しやすい

含浸型と造膜型の中間

光沢、撥水に優れる、維持期間が長い、塗膜割れしやすい、再塗装に手間がかかる


*溶剤による分類

 

溶媒の種類

油状防腐剤

油溶性塗料・防腐剤

水溶性塗料・防腐剤

その他

製品

クレオソート、コールタール等

油性溶媒、石油類(炭化水素)等揮発性溶媒、廃油等に溶かしたもの

水を溶剤とするもの、銅、亜鉛、ヒ素(禁止)、ナトリウム、カリウム、クロム等を含むものもある

ハイソリッド系、エマルジョン系、乳化性系、マイクロカプセル系など

備考

発がん性により使用減少

VOCの問題により基準改定、臭気、引火性確認

油溶性塗料より効果が薄いことが多い

界面活性剤などを添加


*塗装、施工方法の種類

 

方法

表面処理

加圧注入

塗布、浸漬、吹き付けなど

耐圧容器内にて加圧(+減圧)浸透

特徴

簡便、施工後も可能、安価

施設が必要、施工後不可、高価

備考

表面より数ミリの範囲、

内部まで浸潤

 

期待する性能達成の条件を考慮

施工予算及び可能メンテナンス頻度と維持管理予算

 

或るハザ−ドクラスの用途に適した製材品と塗装性能を選択する為の一般的なプロセス例